◆時間外、休日及び深夜の割増賃金(労働基準法第37条)
使用者が、第33条(災害時の臨時の必要)又は前条第1項(三六協定)の
規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、
その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の
賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める
率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ただし、延長して労働させた時間が一箇月について60時間を超えた場合
においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の
計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の
事情を考慮して定めるものとする。
4 使用者が、午後 10時から午前5時までの間において労働させた場合に
おいては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額
の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
◆割増賃金の支払が発生する場合
・非常災害の場合において法定労働時間を延長
・法定休日に労働させた場合。但し、代休付与命令による部分を除く。
(労働基準法33条)
・労使協定により法定労働時間を延長し、または法定休日に労働させた場合
(労働基準法36条)
・深夜労働させた場合
◆割増賃金の支払が不要な場合
実働8時間以内の残業(法定内残業)→所定労働時間7時間(実働)の場合
8時間労働させた週休2日制の会社で、その内1日の休日について労働させ
た場合
◆政令で定める率(割増賃金率)
(1)原則
1.法定時間外労働(法33条、36条により労働時間を延長して労働)
⇒通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上
2.法定休日労働
⇒通常の労働時間の賃金の計算額の3割5分以上
3.深夜業(午後10時から午前5時まで)
⇒通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上
4.月60時間を超える法定時間外労働(当面の間、中小企業は適用猶予)
⇒通常の労働時間の計算額の5割以上
(2)重複する場合
1.法定時間外+深夜業=5割以上
2.法定休日+深夜業=6割以上
3.月60時間超の法定時間外労働+深夜業=7割5分以上
※法定休日に8時間以上労働したからといっても、それは法定時間外労働
ではなくあくまでも法定休日労働なので、「2割5分以上+3割5分以上=6割
以上」となるようなことはなく、3割5分以上のままである。ただし、それが
深夜業に及んだときに6割以上となる。(平成6.3.31基発181号)
◆時間外労働が継続して翌日の所定労働時間に及んだ場合の割増賃金
(昭和26.2.26基収3406号)
時間外労働が継続して翌日の所定労働時間に及んだ場合の割増賃金は、
翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、法第37条の割増
賃金を支払えば法37条の違反にはならない。
◆割増賃金を支給すべき休日労働(昭和63.3.14基発150号)
法37条の規定により、休日労働に対し、割増賃金を支払わなければなら
ないのは、法35条の休日(法定休日)のみである。ただし、法35条の休日
以外の休日の労働により週の法定労働時間を超える場合には、時間外
労働の割増賃金の支払いを要する。
◆休日の振替と時間外労働(昭和63.3.14基発150号)
就業規則に定める休日の振替規定により休日を振り替える場合、当該休日
は労働日となるので休日労働とはならないが、振り替えたことにより当該
週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間に
ついては時間外労働となり、36協定及び割増賃金の支払いが必要である。
◆割増賃金率の引上げの猶予(法附則138条、平成20年法附則3条)
1箇月の時間外労働が60時間を超えた場合は、その超えた時間の労働に
ついては割増賃金率を2割5分以上から5割以上に引き上げられますが、
中小企業には、割増賃金率引上げついては、当面の間、猶予されています。
中小企業に該当するか否かは、「資本金の額又は出資の総額」と「常時使用
する労働者の数」で判断されます。また、事業場単位ではなく、企業単位で
判断されることになっています。
<猶予される中小企業>
業 種 |
資本金の額または
出資の総額 |
|
常時使用する
労働者数 |
小売業 |
5,000万円以下 |
または |
50人以下 |
サービス業 |
5,000万円以下 |
または |
100人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
または |
100人以下 |
その他 |
3億円以下 |
または |
300人以下 |
|