◆代替休暇(労働基準法第37条3項)
3 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるとき
はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者
の過半数を代表する者との書面による協定により、割増賃金を支払うべき
労働者に対して割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払
われる休暇(第39条の規定による有給休暇を除く)を厚生労働省令で定める
ところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が代替休暇を
取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の
労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める
時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを
要しない。
月60時間超の法定時間外労働が行われた場合、労働者に休息の機会を
与え、その疲労回復を図り、健康確保に役立てる観点から、労使協定の締結
により、割増賃金率の引上げ分(2割5分から5割へ引上げ分=25%)の支払に
代えて有給休暇を付与することができる制度が創設されました。
具体的には、例えば、時間外労働を月76時間行った場合、月60時間を
超える16時間×0.25=4時間分の休暇)の付与が可能となる。
なお、有給の休暇付与する場合も、時間単価分と原則的な割増分(つまり
時間単価の上25%)の支払いは必要。
代替休暇の対象となるのは、割増賃金率の引上げ分に限られます。
◆労使協定で定める事項(所轄労働基準監督署長への届出不要)
@代替休暇の時間数の具体的な算定方法
A代替休暇の単位
B代替休暇を与えることができる期間
C代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
@代替休暇の時間数の具体的な算定方法
代替休暇の時間数=(1ヶ月の法定時間外労働時間数−60時間)×換算率
換算率=代替休暇未取得時の支払割増賃金率−代替休暇取得時の支払
割増賃金率
A代替休暇の単位
まとまった単位で与えることにより労働者の休息の機会とする観点から1日、
半日、1日又は半日の一方又は両方の方法で与えることとされている。
※半日については、原則は労働者の1日の所定労働時間の半分のことですが
厳密に所定労働時間の1/2とせずに、例えば午前の3時間半、午後の4時間
半をそれぞれ半日とすることも可能。その場合、労使協定でその旨を定めて
おく必要があります。
<端数の時間がある場合>
労使協定で、端数として出てきた時間数に、他の有給休暇を合わせて取得
することを認めていた場合は、代替休暇と他の休暇を合わせて半日又は1日
の単位として与えることができる。
他の有給休暇には、事業場で任意に創設する有給休暇のほか、既存の休暇
制度や時間単位の年次有給休暇(労働者の請求が前提)が考えられます。
B代替休暇を与えることができる期間
代替休暇は、特に長い時間外労働を行った労働者の休息の機会の確保が
目的であるため、法定時間外労働が1箇月60時間を超えた月の末日の翌日
から2箇月以内の期間で与えることを定める必要があります。
※期間内に代替休暇未取得であっても、使用者の割増賃金支払義務はなく
なりません。代替休暇として与える予定であった割増賃金分を含めたすべて
の割増賃金額を支払う必要があります。
※期間が1箇月を超える場合、1箇月目の代替休暇と2箇月目の代替休暇を
合算して取得することも可能です。
C代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
賃金の支払額を早期に確定させ、トラブルを防止する面から、労使で定めて
おくべきものである。
<取得日の決定方法(意向確認の手続)>
例えば、月末から5日以内に使用者が労働者に代替休暇を取得するか否か
を確認し、取得の意向がある場合は取得日を決定する、というように、取得日
の決定方法について協定しておく必要があります。
ただし、取得するか否かは法律上、労働者に委ねられている。これを強制し
てはならないことはもちろん、代替休暇の取得日も労働者の意向を踏まえた
ものとしなければならない。
<割増賃金支払日>
代替休暇を取得した場合には、その分の支払いが不要となることから、いつ
支払っておけばよいのかが問題となる。労使協定ではどのように支払うかに
ついても協定しておく必要があります。
◆代替休暇と年次有給休暇との関係(平成21.5.29基発第0529001号)
代替休暇は、法37条3項において「(法39条の規定による有給休暇を除く)」
と確認的に規定されており、年次有給休暇とは異なるものであること。
なお、法39条1項は、6箇月継続勤務に対する年次有給休暇の付与を規定
し、その際の当該期間における全労働日の8割出勤を要件としているが、
労働者が代替休暇を取得して終日出勤しなかった日については、正当な
手続により労働者が労働義務を免除された日であることから、年次有給休暇
の算定基礎となる全労働日に含まないものとして取扱うこと。
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