安全配慮義務判例 自衛隊事件

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労働契約と就業規則対策室判例安全配慮義務(陸上自衛隊事件)

  判例 安全配慮義務

 陸上自衛隊事件(最高裁昭和50年2月25日第三小法廷判決)

 (概要)
   陸上自衛隊員が、自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、後退してきた
  トラックにひかれて死亡した事例で、国の公務員に対する安全配慮義務を
  認定した。

 (事案の概要)
   陸上自衛隊員Aは、自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、後退して
  きたトラックにひかれて死亡した。これに対し、Aの両親Xらは、国Yに対し、
  Yは使用者として、自衛隊員の服務につき、その生命に危険が生じないよう
  に注意し、人的物的環境を整備し、隊員の安全管理に万全を期すべき義務
  を負うにもかかわらず、これを怠ったとして、債務不履行に基づく損害賠償を
  求めて訴えをおこした。

 (判決の要旨)
   思うに、国と国家公務員(以下「公務員」という。)との間における主要な
  義務として、法は、公務員が職務に専念すべき義務(国家公務員法101条
  1項前段、自衛隊法60条1項等)並びに法令及び上司の命令に従うべき義務
  (国家公務員法98条1項、自衛隊法56条、57条等)を負い、国がこれに対応
  して公務員に対し給与支払義務(国家公務員法62 条、防衛庁職員給与法
  4条以下等)を負うことを定めているが、国の義務は右の給付義務にとどま
  らず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設
  もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行
  する公務の管理にあたつて、公務員の生命及び健康等を危険から保護する
  よう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解
  すべきである。もとより、右の安全配慮義務の具体的内容は、公務員の職種
  地位及び安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によつて異なるべき
  ものであり、自衛隊員の場合にあつては、更に当該勤務が通常の作業時、
  訓練時、防衛出動時(自衛隊法76 条)、治安出動時(同法78条以下)又は
  災害派遣時(同法83条)のいずれにおけるものであるか等によつても異なり
  うべきものであるが、国が、不法行為規範のもとにおいて私人に対しその
  生命、健康等を保護すべき義務を負つているほかは、いかなる場合において
  も公務員に対し安全配慮義務を負うものではないと解することはできない。
  けだし、右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的
   接触の関係に入つた当事者間において、当該法律関係の付随義務として
  当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的
  に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異に解す
  べき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、
  国が、公務員に対し安全配慮義務を負い、これを尽くすことが必要不可欠
  であり、また、国家公務員法93 条ないし95条及びこれに基づく国家公務員
  災害補償法並びに防衛庁職員給与法27条等の災害補償制度も国が公務員
  に対し安全配慮義務を負うことを当然の前提とし、この義務が尽くされたと
  してもなお発生すべき公務災害に対処するために設けられたものと解される
  からである。









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